ニュージーランド縦断サイクリング1975.12-'76.1

「行った、銀輪走(走った)、見た、知った」……そして残った/サイクリングで駆け巡った彼との45年間

[30]ハリハリ ⇒ フランツ・ジョセフ ⇒ フランツ・ジョセフ氷河 ⇒ フォックス・グレイシャー ⇒ フォックス氷河

    ②フランツ・ジョセフ氷河

 

12月26日(金) 晴れ

今しがた教会から見た、ワイホ川に架かる橋を渡り切った所で左折して真っ直ぐ進むとフランツ・ジョセフ氷河だ。

聖ジェームズ・アングリカン教会から見る、ワイホ川に架かる国道6号線の橋。
橋の袂の左手に見える道路はフランツ・ジョセフ氷河に向かう道路(1975.12.26)

氷河に向かう道路の両側には鬱蒼と亜熱帯性の木が繁り、左手奥からは川の流れも聞こえてくる。

進むにつれて山々からは水が流れ落ちるのが見られ、舗装されていない道路には所々で水が横切るようにして小川となって流れ、スピードを出して突っ込まないと途中で止まってしまいかねない。

もちろん、ペダルを漕ぐことは出来ず、勢いにまかせて濡れないように足を上げて進むしかなく、丸い石だらけの所ではハンドルを取られそうになる。

特に、深い所や幅の広い所では、運にまかせるしかなかった。

 

更に進むと正面が大きく開け、左手は平坦に広く開け、右手は断崖から水が落下している。

そして数分後、左前方に「山と山に挟まれた、白くデッカイ塊」が目に入る。

フランツ・ジョセフ氷河(1975.12.26)

日本を出る前から予想していた、イメージ通りの風景の中に氷河が横たわっている。

生まれて初めて見たせいかも知れないが、そのスケールのデカさと迫力は途轍もなく、ただ圧倒されるだけだ。

 

氷河の見学口に愛車を置き、カメラ2台とフィルムを持って、正面からの氷河を見に行く。

フランツ・ジョセフ氷河。駐車場の前の岩を上って氷河を見に行く(1975.12.26)

フランツ・ジョセフ氷河と氷河見学に向かう人達[やや左手下の岩の上](1975.12.26)

氷河を間近に見て驚いたのは、氷河というのは「川の流れがそのまま凍結した、平面の純白の氷の塊」だとばかり思っていたが、俺の見える範囲からは「平面どころか、想像だにしなかった柱状のデッカイ塊がズラリと並んでいる」光景で、目をみはってしまう。

また、色は純白ではなく意外と汚れていたが、自然の姿だからどうしようもない。

フランツ・ジョセフ氷河(1975.12.26)

フランツ・ジョセフ氷河(1975.12.26)

フランツ・ジョセフ氷河(1975.12.26)

地元の旅行者が下に降りていた事から、俺も岩がゴロゴロある中を苦労して氷河の真下まで行き、氷河の下を流れる水の出口、すなわちワイホ川の源流の前に立つと、そこはドームのような感じ。

氷の壁は水色に美しく、流れ出る水は「ゴォーッ」と物凄い音を立てて出てくる。

そして、ワイホ川源流の流れは、氷の塊とともに下流へと向かっていた。

フランツ・ジョセフ氷河の最下流でワイホ川の源流にて(1975.12.26)

フランツ・ジョセフ氷河の最下流でワイホ川の源流(1975.12.26)

ここで2時間ほど過ごしたらしく、愛車の所に戻ったのは午後5時半だった。

氷河に向かう道には苦労したが、やはり来て良かったと つくづく思った。

 

次いで、16マイル先のフォックス・グレイシャー(Fox Glacier)の町に向かう。

※「氷河の見学口に愛車を置き」について、当時は見学者対応の施設は全くなく、当

 然の如く「見学口」というのも無いため、彼が便宜上書いたもの。

 当時の見学は、駐車場の前にある岩を登って自由に見に行くスタイルで、私は鍵も掛

 けられずに岩に立てかけられていた。

 なお、彼は既に「この国の人は、他人の持ち物には一切触れないし悪戯もしない」と

 確信していたため、寝る時以外は私に鍵を掛ける事は無かった。

※「カメラ2台……」について、彼はスライドフィルムとネガフィルム用として各々1

 台持って行った。