ニュージーランド縦断サイクリング1975.12-'76.1

「行った、銀輪走(走った)、見た、知った」……そして残った/サイクリングで駆け巡った彼との45年間

[34]カードロナ ⇒ クラウン・レーンジ・サミット ⇒ アロータウン遠望 ⇒ ヘイズ湖 ⇒ クイーンズタウン

    ①カードロナ~クラウン・レーンジ・サミット~アロータウン遠望~ヘイズ湖

12月30日(火) 晴れ

午前8時。

今回の旅行において俺としては非常に早く起きたのだが、想定外の事にビックリ。

 

想定外の事とは、テントの半分だけが夜露でグッシヨリと濡れていた事である。

もちろん、テントの上の洗濯物もだ。

 

丁度、谷になっているため、テントも洗濯物もまだまだ乾きそうになく、太陽が山から顔を出して濡れている物が乾いてから出る事にする。

 

午前10時半になって、やっと出発できる。

結局、いつも通りとなってしまった。

 

今日も昨日の続きで、早速 悪路に加え急勾配の上りが始まる。

自転車を引っ張って、右端を歩いたり左端を歩いたりしていると、グンとスピードを落とした車から、また後ろに引っ張られるキャンピングカーの中からも手を振られ、声が掛かる。

 

時々 振り返って見ると、国道89号線の上にはクッキリと自転車のタイヤの跡がついている。

国道89号線。左端には愛車のタイヤ跡が見える(1975.12.30)

引っ張り始めてから相当に時間も経ち、勾配も急に弱くなったのに伴いペダルを漕ぎ始めると、間もなく頂上に着いた。

 

着いてビックリ、標識には「SUMMIT CROWN RANGE 1120m」とある。

 

一昨日のハースト峠でヤマを越したと思ったのに、意外な落とし穴だ。

高さにして丁度2倍、きついはずだ。

 

しかし、日程が遅れていた事もあり、クロムウェルに行く予定を距離が短いからとの理由で変更したのだから自業自得か。

それも、2人のオーストラリア人がワナカでアドバイスしてくれたにもかかわらず……。

「SUMMIT CROWN RANGE 1120m」(1975.12.30)

「SUMMIT CROWN RANGE 1120m」(1975.12.30)

しかし、苦労した甲斐あってか、ここから見る風景には男性的な中に女性的な物を含んだ、素晴らしい眺めが広がっている。

 

十分に風景を満喫してカメラに収めていると、ネガフィルム用として使っていたカメラが振動のためか突然壊れ、スライドフィルムだけになる。

「SUMMIT CROWN RANGE」にて。道路は国道89号線(1975.12.30)

サミットを境に下りになるが、いざ下り始めると楽だろうと思いきや、反対に道路は相変わらずの悪路に加え急勾配で、下手にブレーキを緩めると転倒しかねない。

 

「792m下のカワラウ渓谷をを見よ(VIEW KAWARAU GORGE 792m BELOW)」との標識があったので見ると、下には国道6号線の上をマッチ箱みたいな車が走っている。

「792m下のカワラウ渓谷を見よ」の標識(1975.12.30)

「792m下を見よ」にて。中央部下寄りに見える道路は国道6号線(1975.12.30)

国道89号線にて(1975.12.30)

国道89号線にて(1975.12.30)

さらに下って行くと、左下方には広々とした牧場が広がっている。

ジグザグ道路(Zig Zag Road)に入るころ、前方には山を背にした古い金鉱の町アロータウン(Arrowtown)が見える。

ジグザグ道路から見るアロータウン(1975.12.30)

ジグザグ道路から見るアロータウン(1975.12.30)

ジグザグ道路から望遠レンズで見るアロータウン(1975.12.30)

カメラに収めて下り始めると、さすがは「ZIG ZAG ROAD」と標識が有るだけあって、もし反対のコースをとっていたらと思うと恐ろしくなる様な とんでもない道路で、下りきって振り返ると、いま通って来た道が上から下まで見える。

ジグザグ道路(1975.12.30)

アロータウンに行く予定だったが、明後日はもう正月だというのに所持金は5$しかなく、日本の銀行を思い浮かべると両替は今日しかないと思い、真っ直ぐクイーンズタウン(Queenstown)に向かう。

ちょっと暑いが、道路が良いのでピッチが上がる。

 

国道6号線に入って間もなく、右手に周囲を山々に囲まれた牧場の中に、小さくはあれ静かに水を湛えた湖水に木々を映すヘイズ湖(Lake Hayes)の美しさは格別で、まるで絵を見ている様だ。

一生涯こういう所で暮らして見たいと思う様な所だ。

ヘイズ湖(1975.12.30)

※「テントの半分が夜露で……」について、テントは偶然だが南北の向きに設営したた

 め、東側のみ乾いており西側が濡れていた。

※「右端を歩いたり左端を歩いたり」について、通る車は殆ど無かったため、勾配が少

 しでも緩くなるように取った行動。

※「カメラが振動のためか突然壊れ」について、彼は帰国後 修理に出したところ直った

 ため、次の旅行から再び使っていました。

※「ヘイズ湖」は彼のお気に入りで、「クイーンズタウンやアロータウンを訪れた際に

 は、是非とも足を延ばして欲しい」と今も話している。