ニュージーランド縦断サイクリング1975.12-'76.1

「行った、銀輪走(走った)、見た、知った」……そして残った/サイクリングで駆け巡った彼との45年間

[33]ワナカ湖 ⇒ ハウェア湖 ⇒ ワナカ ⇒ カードロナ

 

12月29日(月) 晴れ

昨日の蚊に続いて、今朝はブヨに悩まされる。

午前10時半に出発。

 

出発が遅いせいもあるのか、昨日と打って変わって久々に夏らしい天気だ。

ワナカ湖(1975.12.29)

ワナカ湖(1975.12.29)

ワナカ湖とマウント・アスパイアリング国立公園、ハウェア湖と素晴らしい風景が続く中を走るが、とんでもない道路のため舗装道路の有難さを身に染みて感じた一日でもあった。

 

走っている車は、殆ど全部と言って良いくらい後ろにキャンピングカーやモーターボートを引っ張り、土ボコリをモウモウと上げて走っている。

土ボコリをモウモウと上げて走る事については日本も同じだが、一つだけ極端な違いがある。

 

本当に信じられない事に、殆どの車は俺を中心に前後30~50m位を出来るだけスピードを落として、土ボコリが立たない様に走ってくれるのだ。

 

はっきり言って それ程の効果はないが、気分的には物凄く嬉しい。

 

日本では どちらかと言うと邪魔者扱いで、一度もスピードを緩めてもらった経験は無い。

 

ニュージーランドでは、自転車もれっきとした車と見てくれるみたいだ。

また、キャラバンカーに乗っている子供たちからも手を振られ、なんとなく気分が良い。

 

マウント・アスパイアリング国立公園の山々を水に映すワナカ湖畔を走り、ワナカ湖とハウェア湖(Lake Hawea)の両湖を見る事が出来る標高405mのネック(THE NECK)を過ぎると、今度はハウェア湖だ。

THE NECK(1975.12.29)

THE NECKから見るワナカ湖(1975.12.29)

THE NECKから見るハウェア湖(1975.12.29)

THE NECKから見るワナカ湖(1975.12.29)

THE NECKから見るハウェア湖(1975.12.29)

明るく強い陽光の中を走っていると、ミニバスで旅行している人達から不意に止められ いろいろと話す。

話している中で「どこからどこまで行くの」と聞かれ、「レインガ岬からスチュワート島まで」と言うと、いつもそうだが「考えられない」、「信じられない」と言った顔をする。

 

ここでは、俺の様な荷物を付けたサイクリングは珍しいのだろう。

俺もニュージーランドに入ってもう1ヵ月だが、まだ2人しか見ていない。

 

水筒を見せて「ワナカ湖の水だ」と言ってカップに入れて出してくれる人、「疲れが取れるから」と言ってキャンディを箱ごとくれる人、一緒に写真を撮る人などで、たった20分間ほどだったが本当に人懐っこい人達だ。

そして、皆から「Good traveling」、「Nice traveling」、「Have a safe trip」と声を掛けられ、バスは遠ざかって行った。

ハウェア湖(1975.12.29)

また、暑い中をモーターボートが疾走するハウェア湖を左に見ながら走り、大分過ぎた頃やっと舗装道路になった。

 

舗装道路になって間もなく、ハウェア湖のほぼ全容を見渡せる展望所があり、ここには真下にブルーの水を満々とたたえるハウェア湖から水が引かれ、カップやホースも備え付けられてある。

粋な計らいのお蔭で、カップでのどを潤したり、手や顔を洗ったり、備え付けのホースでワナカ湖方面から来たホコリで真っ白になった車を洗ったりする事が出来るようにしてある。

車で来た人は、ホースで水を掛けてホコリを落としており、車も実に心地よさそうに見える。

 

俺は、しばらくの間ハウェア湖を眺めて休憩した後、ポリタンクにハウェア湖の水を一杯に詰め、ワナカ(Wanaka)に向かう。

ハウェア湖(1975.12.29)

ハウェア湖(1975.12.29)

展望所で水は入れ替えたし、道は良いし、左にはハウェア湖、右には柵の無い牧場が広がる中では牛が心地よさそうに寝そべっている、美しくのどかな風景が続く。

 

この気分も束の間、道の真ん中で2頭の牛が通る車を無視して「ケンカ?」の真っ最中だ。

不思議と車はクラクションを鳴らすことなく、スピードを落として通り過ぎて行ってしまう。

 

俺はと言うと、やはり生身の体、なんとなく恐怖が頭にこびりついて離れない。

このため、俺も車を真似て2頭の牛の機嫌を損ねないようにゆっくりと道路の端を走って行こうとすると、どうした事か「車を無視して角と角を突き合わせていた牛」が俺を見るや否や逃げ出したのには、唖然とすると同時に「ホッ」とする。

 

ハウェア湖も終わり近くになると、湖畔にはキャラバンカーがズラーッと並んでいて、湖ではモーターボートが白い波を立てて軽快に疾走し、岸近くでは人々が泳いでいるのを うらめしそうに見ながら、ハウェア湖を後にする。

ハウェア湖を後にする(1975.12.29)

約1時間後、ワナカの町に入る。

数時間振りに再びワナカ湖を前にし、湖の向こうには頭を白くしたマウント・アスパイアリング国立公園の山々が連なっている。

ワナカ(1975.12.29)

ワナカ(1975.12.29)

 

ワナカ(1975.12.29)

郵便局で、先日フォックス氷河で書いたニュージーランドに来て2度目の葉書を出し、マーケットで食料、ノート、蝋燭、フィルム等を買い、大きな袋を抱えて店を出ると、4~5人の人が俺の愛車を見て盛んに「Very good bike」とほめている。

 

そして、俺を見つけると、サイドバッグに付けた小さな国旗を見てか「Are you Japanese」と聞かれ、「Yes」と答えると、やはり日本人は珍しいのかビックリしたような顔をして、いろいろと話し掛けてくる。

 

オーストラリアから来たという二人の青年が「これからどう行くのか」と聞くので、地図を出して予定していたクロムウェル(Cromwell)経由でクイーンズタウン(Queenstown)までを指さしていくと、「国道89号線は道が酷いから、クロムウェル(Cromwell)を通る国道6号線を行った方が良い」と言ってくれたのだが……。

 

日程が遅れていた事もあり、予定を変更して最短距離でクイーンズタウンへ向かうべく、注意を聞かずに国道89号線を行ったのがまずかった。

 

ワナカを出ると直ぐに牧場が広がり、それに合わせるかの様に道路も未舗装になり、道路には土ボコリがウッスラと積もっていて、走っている車は見えずとも、その舞い上がる土ボコリでどの辺を走っているかが良く分かり、自転車も真っ白である。

 

悪戦苦闘の末、カードロナ(Karodrona)から約10km進んだ牧場の脇にてキャンプ。

 

前を流れるクリークで手と顔を洗い、ついでに靴下は昨日に続いて2回目、ジャージは初めて洗ってテントの上に広げて掛け、テントに入る。

寝袋の上にて。Good night.

※「ノート、蝋燭」の購入について、ノートは日記用、蝋燭は灯り用として持って行っ

 た「折りたたみ式のランタン」に使用したもの。