[14]タウポ
12月10日(水) 曇り時々雨
今、ローリーの家に居る。
今日は ひょんな事からローリーと会い、いろいろな事があった一日だった。
午前1時ごろ。
空港の扉の無い格納庫の中で寝ていると、パトロール中のローリーにサーチライトで照らされて目を覚ます。
不審者と見たローリーも、話している内に「今、俺が何をしているか」が分かってくれたらしく、「朝の5時に再び来るから」と言って別れた。
時は過ぎて午前5時。
予告どおりローリーが来て、「今日は天気も良くないし、泊って行かないか」と言う。
空を見ると、今にも降りそうな天気だ。
雨はサイクリングにとって最も嫌なものであり、直ぐにOKすると、車の荷台部分に愛車を積載し、きのう来た道をローリーの説明を聞きながら家に行く。
朝食をいただきソファーに座っていると、起きて来た子供たちが不思議そうに俺を見ていたが、すぐに学校に行ってしまった。
昼前、「日本の女の子がタウポに居る」と新聞を見せてくれ、ローリーは直ぐに彼女の住む家に電話をして彼女を電話口に出してもらい、俺に代わる。
彼女は「エミさん」と言い俺の事を「物凄く珍しい人」だと言った。
そして、「こちらへ来られませんか?」と言われ、返事に困ってローリーに代わると……。
電話を切ったローリーが言うには「今から行くから」。
俺は服を着替えてローリーと共に行き、彼女および彼女を通してローリーと2時間ほど話して家に帰る。
彼女は群馬県の出身だそうで、交換留学生でニュージーランドに来て7ヵ月住んで居るとの事。
また、俺の2冊の辞書を見て「英和と和英が一冊になったコンパクトな良い辞書がありますよ」と、彼女が使用している三省堂のコンサイスを見せてくれる。
帰ってからは、ドンナ(12歳)、トレイシー(10歳)、ローリー(9歳)、ベロウ(7歳)の4人の子供達と話をしたり、テレビを見たりしていたが……。
英会話力ゼロの俺。
テレビを見ていても画像を見ているだけで、何を言っているのかサッパリ分からず、その表情およびアクセントと分かる単語で内容を想像するのだが、番組によっては見事に裏切られるものもあった。
なお、チャンネルが2つしか入らないというのは非常に良いと思う。
今日は走らず。
※「不審者と見た」について、彼は2011年までの36年間このように思っていた。
しかし、彼の姪が2011年12月にローリーの姉さんを訪ねた際、彼女から『「ローリー
はまさか人間がいるとは思わず、大きな犬が居ると思ったそうだ』と聞いてきた」と
帰国した姪に言われ、予想外のことに驚き笑っていた。
※「物凄く珍しい人」との表現は、当時ニュージーランドに来る日本人が殆どいなかっ
た事と、加えて車社会のニュージーランドを自転車で走るということに対するもの。
※「服を着替え」の服については、日本を出発する際に着ていた服装一式で、彼はサイ
クリング中に使用するとは思いもしていなかった。
※「トレイシー」は、1991年に日本に来た際、彼の家に立ち寄っている。