ニュージーランド縦断サイクリング1975.12-'76.1

「行った、銀輪走(走った)、見た、知った」……そして残った/サイクリングで駆け巡った彼との45年間

[14]タウポ

 

12月10日(水) 曇り時々雨

今、ローリーの家に居る。

今日は ひょんな事からローリーと会い、いろいろな事があった一日だった。

 

午前1時ごろ。

空港の扉の無い格納庫の中で寝ていると、パトロール中のローリーにサーチライトで照らされて目を覚ます。

不審者と見たローリーも、話している内に「今、俺が何をしているか」が分かってくれたらしく、「朝の5時に再び来るから」と言って別れた。

 

時は過ぎて午前5時。

予告どおりローリーが来て、「今日は天気も良くないし、泊って行かないか」と言う。

空を見ると、今にも降りそうな天気だ。

雨はサイクリングにとって最も嫌なものであり、直ぐにOKすると、車の荷台部分に愛車を積載し、きのう来た道をローリーの説明を聞きながら家に行く。

 

朝食をいただきソファーに座っていると、起きて来た子供たちが不思議そうに俺を見ていたが、すぐに学校に行ってしまった。

 

昼前、「日本の女の子がタウポに居る」と新聞を見せてくれ、ローリーは直ぐに彼女の住む家に電話をして彼女を電話口に出してもらい、俺に代わる。

 

彼女は「エミさん」と言い俺の事を「物凄く珍しい人」だと言った。

そして、「こちらへ来られませんか?」と言われ、返事に困ってローリーに代わると……。

電話を切ったローリーが言うには「今から行くから」。

 

俺は服を着替えてローリーと共に行き、彼女および彼女を通してローリーと2時間ほど話して家に帰る。

彼女は群馬県の出身だそうで、交換留学生でニュージーランドに来て7ヵ月住んで居るとの事。

また、俺の2冊の辞書を見て「英和と和英が一冊になったコンパクトな良い辞書がありますよ」と、彼女が使用している三省堂のコンサイスを見せてくれる。

 

帰ってからは、ドンナ(12歳)、トレイシー(10歳)、ローリー(9歳)、ベロウ(7歳)の4人の子供達と話をしたり、テレビを見たりしていたが……。

英会話力ゼロの俺。

テレビを見ていても画像を見ているだけで、何を言っているのかサッパリ分からず、その表情およびアクセントと分かる単語で内容を想像するのだが、番組によっては見事に裏切られるものもあった。

なお、チャンネルが2つしか入らないというのは非常に良いと思う。

 

今日は走らず。

※「不審者と見た」について、彼は2011年までの36年間このように思っていた。

 しかし、彼の姪が2011年12月にローリーの姉さんを訪ねた際、彼女から『「ローリー

 はまさか人間がいるとは思わず、大きな犬が居ると思ったそうだ』と聞いてきた」と

 帰国した姪に言われ、予想外のことに驚き笑っていた。

※「物凄く珍しい人」との表現は、当時ニュージーランドに来る日本人が殆どいなかっ

 た事と、加えて車社会のニュージーランドを自転車で走るということに対するもの。

※「服を着替え」の服については、日本を出発する際に着ていた服装一式で、彼はサイ

 クリング中に使用するとは思いもしていなかった。

※「トレイシー」は、1991年に日本に来た際、彼の家に立ち寄っている。

タウポとタウポ湖2-1(1975.12.09)

タウポとタウポ湖2-2(1975.12.09)

タウポ湖を挟んで見るトンガリロ国立公園(1975.12.09)