ニュージーランド縦断サイクリング1975.12-'76.1

「行った、銀輪走(走った)、見た、知った」……そして残った/サイクリングで駆け巡った彼との45年間

[30]ハリハリ ⇒ フランツ・ジョセフ ⇒ フランツ・ジョセフ氷河 ⇒ フォックス・グレイシャー ⇒ フォックス氷河

    ③フランツ・ジョセフ氷河~フォックス・グレイシャー~フォックス氷河

 

12月26日(金) 晴れ

フランツ・ジョセフ氷河を後に、来た時と同じ道を通って国道6号線に戻り、フォックス・グレイシャーに向かう。

フランツ・ジョセフ氷河を後に(1975.12.26)

ハリハリからフランツ・ジョセフまでの意外と平坦な道とは打って変わって、上り下りが3回もあり結構ハードだった。

 

午後8時ちょっと過ぎに、フォックス・グレイシャーの町に着く。

ここでフィルムと絵葉書4枚だけ買ってフォックス氷河(Fox Glacier)に向かう。

フイルムと絵葉書で35$56¢支払うが、フィルムは実に高い。

 

フォックス氷河に向かう道も未舗装で、水が横切っている所などスピードを出して突っ込まないと途中で止まってしまい、ズブ濡れになりかねない所も少なくない。

もちろんペダルを漕ぐ事は出来ず、足を前に上げて運にまかせる・

 

ここはフランツ・ジョセフ氷河の時とは反対に、右手が開け左手が山になっている。

 

午後9時近くと言う事もあってか、町に帰る車は3~4台見たが、俺を追い抜いていく車は1台も無い。

 

ここニュージーランドは、南に南下すれば南下するほど日の暮れるのも遅くなり、午後9時と言っても まだまだ明るい。

 

また、非常に面白く不思議に思ったのは、両氷河への道は いずれも両サイドはこんもりと亜熱帯性の植物が繁っていた事だ。

 

早くフォックス氷河を見たい、少しでも近い所から見たいと言う気持ちもあってか、自転車を引っ張って行ったのは良いが……。

石ころだらけで進むのも容易でなく、もう遅い事もあって遠い所から眺めるだけにし、寝る所について簡単にして考えた末に出たのが「ここでキャンプを張る」事であり、現在テントの中でこれを書いている。

フォックス氷河(1975.12.26)

テントから顔を出して見ると、空には満天の星が輝き、前にはフォックス氷河が横たわっている。

テントを開ければ、何時でもフォックス氷河が見える。

 

そして、物音一つしない静寂の中、澄んだ空気は冷たく、その中に居る人間は俺一人のみ!!

 

今日のキャンプは、俺のサイクリングにおけるキャンプの中で最高のキャンプだ!!!

 

しかし、寒い!!!

 

妹、叔母さん、友人のY、部活のS先輩 宛に先ほど買った絵葉書を書く。

※「来た時と同じ道を通って……」について、当時はこの道しかありませんでした。

※「簡単にして考えた末に出たのが『ここでキャンプを張る』事であり」については、

 適当な野宿する場所は当然の如く無く、彼は「町まで戻ろうか否か」で迷ったがキャ

 ンプを張る事にした。

 なお、彼は出発前にニュージーランド政府観光局で質問した際の返答もあり、キャン

 プを張る事について全く迷いは無かった。

 しかし、彼も私も「半世紀近く過ぎた現在においては、考えられない事」だろうと思

 っている。